- 山口 栄作
安心して暮らせるまちづくり
三つ目は“安心して暮らせるまちづくり”という視点です。
コロナ禍により、救急の受け入れが難しくたらいまわしになったり、入院できず自宅療養になった。
医療現場の逼迫が問題視され、ベット数が不足しているというニュースが連日流れていました。
病棟を必要としているのはコロナ患者だけではありません。持病や交通事故、診察など様々な人の命のよりどころであります。
松戸市総合医療センターはその名の通り、そうした様々な状況に対応できる医療施設です。
救命救急センター、臨床研修指定病院、千葉県災害拠点病院に指定されています。
松戸市で一番大きな医療施設であり、松戸だけではなく近隣の流山市や柏市などからも受け入れています。
この総合医療センターは市立病院であるため、医療収入のほか運営費の一部を松戸市民の税金で賄っております。
もちろん松戸市の皆さんが利用する病院でありますが、一方で市外の患者さんも受け入れているのも事実なのです。
そうなると、この市立病院は松戸市だけで支えるべきものなのかという純粋な疑問がおきます。
市といえども、公共サービスを維持するには財源が必要であり、その財源は市民の負担。
ではもし、その公共サービスや施設が赤字続きであったならどう感じるでしょうか?
お金を出している市民の身からすると、黒字でないのであれば運営を考えなおしたほうがいい、利益を重要視しないと苦しい、そんな気持ちになる。
しかし市政はビジネスとは違います。
お金の損得だけみていては大事なことを見落としてしまう事があります。
この松戸市総合医療センターは、先に述べたように、救命救急センターを含む千葉県災害拠点病院に指定されています。
これはどういうことなのかというと、いつでも救急の患者さんを受け入れる体制が整っているということです。
三次救急に指定されている総合医療センターは、特に命に関わる局面を担います。
正確な判断ができる環境と、その判断を元にすぐに対応できる体制が必要です。
つまり24時間365日、最上級のプロフェッショナルチームを稼働させておかなくてはならないのです。
さらにいつ来ても受け入れられるように、ベットの空きも確保する必要があります。
最後の砦になるからこそ、最高の環境で常に余剰を維持して置かなければならないというわけです。
となると、この体制で利益を出すことは可能でしょうか?
かなり難しい構造であることが理解して貰えるかと思います。
では無くせばいいのか?
そうでもありませんよね。
むしろこの施設が赤字になってしまっても維持できるようにする。
それが安心して暮らせるまちづくりなのです。
そのためには、松戸市だけではなく千葉県がこうした医療施設をはじめとする人々の要になる施設やサービスの維持に取り組むことが大切なのです。
一人でも多くの人が安心して住み続けられる社会のためには、一人一人が大きな視点で物事を考えることが大事なのです。